くじら
〈織人目線〉



「警備は…完璧だが。穴をあけたら落ちます、」


藤堂先生の弟は ぽつりと言った


じぃと外をみていた






俺は彼と屋敷の警備体制について調べて回ってる

親父は 別行動だ



「藤堂さん…」

「静加で構いませんよ、面倒でしょう」



さらりと言う
あまり名前で
呼ばれる事に抵抗はないのか


「…はい」



「雅昭様の予想は的中のようですね。なぜか使われてない屋敷にまで警備されてる、あっちに人がいると言っているようなものです。」



淡々と事実を言う顔は
無表情で少しぞっとした



もしかしたら彼は



死体をみても動揺すらせず


ただ成すべき事を成し
あるべき事実を受けとめ

自分がしなければならない
事を即座に理解し実行する



感情全て置き去りにして…


「あちらにいるんでしょう。三高、藤堂両家の人間、そして白鴉に関わる人間。三高・藤堂家は確実…兄をたぶらかした女と、叔父を使われてない屋敷で見ました。」




「見えたんですか…?」



静加さんはこくりと首を振った


「視力はいいんです…。特に自分の嫌いな人間はすぐ見つけられます、」


嫌いなのか、
兄をたぶらかした女…



三高 澄…

叔父は…たしか藤堂豊…



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