くじら








「あれ瑠璃子さんお一人ですか?」


織人さんが 一つ空いた綾子さんの席をみていた

「ええ…。雅昭様に呼ばれて…」



「あぁ。瑠璃子さん…先生、密偵の手引きで抜け出せたみたいです。いまは屋敷内に…どうやら地下に閉じ込められていたようです。」


織人さんは 小さい声で言った




「地下に…」



「拷問まがいの事をしていたのでしょう…。かわりにあのお嬢さまに入っていてもらいました。少し手厳しいかもしれませんが…」



あのお嬢さま、



「まさか花園の……」


「えぇ。眠らせました、しばらくは起きないでしょう、」




眠らせたって…
すごいわ、綾部家のやり口


「…瑠璃子さん。彼を本当の意味で解放させるのはあなたの役割です…。確かに彼はこの屋敷からは逃げられる、けど三高、花園、藤堂は確実に彼を追い詰める。」



「織人さん。」




わかっている。
先生といるためには…



「俺達は道は作ります、けど最後は手伝えません。最後は……あなたがたふたりが自力で頑張るしかない。」

「はい…」



織人さんは呟くみたいに言った





「俺と綾さんは…あなたと先生の幸運を祈ってます。…では、」





まるで風みたいに
入口に歩いて行った



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