くじら
〈先生目線〉
「久白君。似合ってるね、警察の格好…」
「雅昭様。」
俺は彼の手引きで
久しぶりに地上にあがった
ぼけっと外を眺めていた
「ありがとうございます。しかしこの服は…、いいんですかね。」
「いいよ。…」
彼はにやりと笑った
意地の悪そうな笑い方だ
「…拷問は大丈夫だったかい。」
「なんとか…、白鴉に比べたらぬるい拷問でしたよ。」
はははと雅昭さんは笑った
「良かったよ。君が藤堂家の人間で常人なら2日で正気を失っているはずだからね、拷問された人間に見覚えは?」
「あります…、有馬家と日下家…ほか色々。」
そうかそうかと楽しそうに頷いた
「有馬、日下、花園、三高、ははは…裁く人間が多いなぁ。よりによって華族様ばっかりなんて…西条君のあわてる顔が目に浮かぶよ…かわいそうに」
全然かわいそうではない言い方だった
西条君とは西条高広だろう…
雅昭さんの友人で法務大臣補佐
「雅昭さん…」
「悪いが妥協はしないよ。醒めない夢はない、終わらせるには徹底的に…、久白君。今まで気づいてやれなくてすまなかった……」