くじら



俺は首を振った


雅昭さんは真面目な顔で俺をみた


「…僕も甘えていたんです、だから謝らないでください。雅昭さん…」


「もっと早くに君を救えたら良かった。気づかなかった自分がいまでも憎い、だからこんな意地悪いやり方でやり返すしかない。」


雅昭さんは慶応に
臨時で一時期教授をしていた


よく話していたが
澄さんの事は話さなかった




澄さんと逃げて連れ戻された後
彼は随分心配してくれた…




誰もあなたを笑ったりしない…


素敵な夢だわ


いつかあなたの
夢がかなうといいわね…




ごめんなさい…。



澄さん


あの人は唯一
俺の未来を願ってくれた人


彼女を好きになった事は後悔してない…



「……悔いても過去には戻れません、…あれは必要な過去だった。僕も消したくはありません、彼女のおかげで多くの事に気づけた。そして、あなたに再び会うことが出来た、」



「…前向きな意見だな。久白君」


窓辺から月を見上げた



「感謝しています。雅昭…いや綾部先生、」





「嫌みなくらいソツのない話術だな。感謝するのは早いよ、評価は全てが終わった後だよ」




「あなたは“A”評価をくれると思いますよ。なにせ僕は優秀な藤堂家の人間ですから」




だれが君にやるか と彼は笑った



< 349 / 370 >

この作品をシェア

pagetop