くじら
俺は首を振った
雅昭さんは真面目な顔で俺をみた
「…僕も甘えていたんです、だから謝らないでください。雅昭さん…」
「もっと早くに君を救えたら良かった。気づかなかった自分がいまでも憎い、だからこんな意地悪いやり方でやり返すしかない。」
雅昭さんは慶応に
臨時で一時期教授をしていた
よく話していたが
澄さんの事は話さなかった
澄さんと逃げて連れ戻された後
彼は随分心配してくれた…
誰もあなたを笑ったりしない…
素敵な夢だわ
いつかあなたの
夢がかなうといいわね…
ごめんなさい…。
澄さん
あの人は唯一
俺の未来を願ってくれた人
彼女を好きになった事は後悔してない…
「……悔いても過去には戻れません、…あれは必要な過去だった。僕も消したくはありません、彼女のおかげで多くの事に気づけた。そして、あなたに再び会うことが出来た、」
「…前向きな意見だな。久白君」
窓辺から月を見上げた
「感謝しています。雅昭…いや綾部先生、」
「嫌みなくらいソツのない話術だな。感謝するのは早いよ、評価は全てが終わった後だよ」
「あなたは“A”評価をくれると思いますよ。なにせ僕は優秀な藤堂家の人間ですから」
だれが君にやるか と彼は笑った