くじら










夜になり 晩餐会は終わり舞踏会が始まった



ただの舞踏会ではない仮面舞踏会



どこの誰が紛れ込んでるかわからない


それもまた舞踏会の一興…



変なお面をつけ私も何曲か踊った



綾子さんも器用に踊っている




楽団の綺麗な音色、踊る人…









素敵なはずなのに私は素敵だと思えない…






ダンスの輪から抜けて私はバルコニーに出た


風が気持ちいい

夏に先生と話したのを思い出した






先生…先生













すっと目の前にグラスを差し出された



なにも入っていない

「なに…」


布でグラスを一瞬覆った次の瞬間



薔薇が出てきた





「あなた……」



後ろを振り返ったら仮面をつけた男の人がいた



「…誰」



「僕ですよ。瑠璃子さん、来てくれてありがとうございます」





先生…



「せ…んせい…」


「心配かけてすまなかったね」



私は首をふった



ちぎれるんじゃなかいかってくらい




先生



「良かった…無事で…」


「うん…」








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