くじら
「そうですか」
何を言うでもなく先生は頷く
「…昨日、昴さんに会って先生の事聞きました。……先生がどうして女性を信じないのか…」
「―事実ですよ。瑠璃子さん」
何ともない
みたいに先生は言う
―異端なんだよ。
―藤堂で、久白兄さんは
「―先生はずっと人を信じないままなのかって考えたら……、私は」
そうだったら
すごく悲しいと思う
「哀しいと思いました。先生がずっとそうだったら、…」
「瑠璃子さんは本当に母親みたいに心配するんですね。…母からも言われましたよ、『あなたが心配だ』って…」
眼鏡を外し、懐にしまった
先生は哀しくないのかしら。
「先生の御母様は、もう…」
「亡くなりました。病気で…ね。」
そうなんだ…。
なんとなく実感がわかない
まだわたしの
母様は生きているから…