くじら
「僕が横恋慕しようとした彼女は生きてます。皮肉ですね……」
「先生…。」
先生は口を開いた
目を閉じて。
誰かを思い出すみたいに…
「頭が痛くなります。貴女と話していると…、彼女によく似ていた彼女を思い出すから…」
彼女
…先生の好きになった人…
「私が……?」
尋ねると えぇと力なく頷いた
「初めて会った時、驚いた。一瞬、彼女かと思ったから…」
先生は右手でクシャクシャと髪をかいた
「――…先生」
「……君は好きだけじゃ何が悪いかと聞きましたよね。前に…本当の事言います、僕は君と好きだった人をたぶらせて見ている…」
だぶらせて…?
先生は私を通して
彼女を見ているの…?
似ているから。
わたしは布団を
両手で握りしめる…
「……嫌でしょう、。瑠璃子さんは僕が好きなのに、僕は貴女を通して別の女性を見てる……。そんなの、誰も幸せになれない」