宝箱
あなたがわたしの前から消えたのは、わたしとあなたが出会って一年が経ったころだった。
その時のわたしは、あなたにほんの少しだけ愛情を感じていた。
最初はあなたから声をかけたのよ?
わたしはさっき買ったばかりの本を開いて、周りが見えないほど本の世界に入りこんでいた。
「…と…。すみません!」
ちょっと大きな声に驚いて本の世界からもどってきた。
すると目の前にあったのは、すこし困った顔をしたあなただった。
「すみません。何回か呼んだんですが、本に集中していたようなんで…」
「いえ、こちらこそすみません。なにかご用でしたか?」