宝箱
高校デビューしようよ!
桜の花びらが敷きつめられた道をゆっくりと歩く。
真新しいローファーに桜の花の汁がつく。
新しい物に包まれた少女は溜め息をつく。
「春なのに梅雨のようにじめじめしてる」
少女から出てきた言葉は、何が?と聞き返したくなるようなモノだった。
残念なことに返す人は誰もいなかった。
「だいたい、あいつが高校デビューするからよ!!」
じゃなかったら私が振られるワケがない!!
ぶつぶつと呟いていると急に影がかかった。
「ぶつぶつ言ってると、せっかくの可愛い顔が台無しだよ?」
「へ?!」
振り返るとそこには同じ学校の制服に包まれた、はっきりと言って平凡という名がぴったりな少年がいた。
でも、平凡なのにどこか引き寄せられる。
「ねぇ。良かったら一緒に高校デビューしよ?」
ニッコリ笑う少年に心なしか頬が熱くなる。
もちろん返事は決まっている。
「はい!!」
元気で明るい少女の声は桜の舞い落ちる空に響いて消えた。
EnD
これは確か授業中に途中まで書いて、最後は無理矢理終わらせた物語。
でも、この男の子はお気に入り。