宝箱
カラー
私はいつも1人でいた。
私はすみっこでいつも一人ぼっち。
私はそれが苦ではなかった。
どちらかというと人混みは嫌いだし、一人のほうが好きだったから。
私の色はたぶん灰色。
私の心みたいにどっちかはっきりしない灰色。
「加納(カノウ)!!これ持ってくれるか?」
「はい」
担任の藤田のお願いをとくに不満も感じずに受け入れる。
「数学のノートなんだが、1人で教員室まで運ぶのはちょっと辛くてな」
あはは、と苦笑いをする担任を私は嫌いじゃない。
1人でいる私に“友達をつくれ”とか言わないし、『私』というものを受け入れてくれる、良い先生だと思う。
「やっとついたな。ありがとうな加納」
「い、いえ」