宝箱
声が聴こえた【未】
ここはどこ…。
目覚めると、目の前には男の泣き顔があった。
彼はどうして泣いているのだろうか。
私は首を傾げた。
その途端、目の前の彼から涙が溢れた。
「…?」
手があたたかい。
どこか安心する温もり。
その温もりを辿っていくと、彼に握られた私の手があった。
「ゆり…」
泣いた顔のまま、笑いかけるこの人がそのまま消えてしまう気がした。
彼に握られた手とは逆の左手をそっと上げる。
私はこの人が誰かなんて知らない。
でも、彼の行動が、笑った顔が錯覚させる。
この人は、私を待っていてくれていたんじゃないだろうか。
「…泣かないで」
そっと彼の頬に触れる。
「!!」
少し驚いた顔。
「大丈夫」
ありがとう、と笑った彼に安心する。