ロシアンルーレットⅡ【ｺﾐｶﾙｱｸｼｮﾝ】

「おい、ガキはどうした？　ガキを映せ。」


　目出し帽の男が、腹立たしげにカメラに向かって言う。


　画面が部屋の中をクルクル回転し、そして、ハムのようにロープでぐるぐる巻きにされた４歳ぐらいの少年をようやく捕らえてカメラの動きは止まった。


　少年は、尺取虫のような動きで、部屋の中を移動中だった。


「クソガキ！　ちょろちょろしやがって…」


　目出し帽の男が少年に向かって舌打ちし、再び画面に向き直った。


「ヤツがうちに何をしたか、お前はわかってるはずだよなぁ？　谷口。」


　男の言葉に、思わず谷口さんを見た。


　『ヤツ』ってのは、兄貴のことだよな、『うち』ってのは多分、この男が所属する組織。


　兄貴は一体何をしでかしたんだ？


　クソ兄貴め、もうほんと、めんどくさいし。


　谷口さんが、そんな俺に一瞬だけ視線を寄越したが、気まずそうな表情を浮かべ、すぐに再び視線を画面へと戻した。