ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 ハリウッド俳優かなんかと勘違いしたんだろう、前列の女子共が、一斉に黄色いかなきり声を張り上げた。


 司会のお姉さんも、それを真に受けて、『うそ? 誰?』みたいな顔をしている。


 誰でもねぇし、あんたの知らない人だし、と一応突っ込んどく。


 マイクを手にした兄貴の第一声。


『そこ、写メらない! 僕は一般人です。』


 最前列の女子を指差し、涼しい顔で注意する。


 兄貴は真実を述べたまでだというのに、『え~~~~!』だの『一般人とか絶対ウソ~~』だのと、何故かブーイングが飛び交う。


 そんな彼女たちを、冷ややかに横目で見やると、諦めたように今度は大勢の人間が蠢く観客席を一通り見渡した。


 そして、マイクを通して静かで穏やかな兄貴の声が、場内に響き渡った。


『皆さん、落ち着いて聞いてください。』


 観客は兄貴のその言葉で何かを察したのか、さっきまでのざわめきが嘘のように静まり返る。


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