ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
『今から1時間後に…』


 兄貴はそう言うと、マイクを持っていない左手でジャケットを掴み、勢い良く開いて胸部を顕わにした。


 薄いブルーのシャツの上に、何やら太いベルトのような物で、小さな四角い機械が腹部に密着するように固定してあった。


 その小型機械の小さな赤ランプが、一定のリズムで点滅しているのが遠目に見てもわかった。


『俺は爆発します。』


 場内はたちまち騒然となる。


『慌てないでください。まだ時間は十分あります。二手に分かれて、ゆっくり出口へ向かって進んでください。係員の誘導に従って、西口、東口から…』


 兄貴はまるで、1時間後の自分の死を意識していないかのように、舞台上から冷静に指示を出す。


 あの色ボケシルバーマンめ、悪ふざけにも限度があるだろーが。


「皆人、お前どこで油売ってやがった。」


 不意に背後から怒鳴られ振り返ると、谷口さんがじっとりと俺を見下ろしていた。


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