ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「ちょっと東郷の件で… 後で詳しく話します。それよりこれ…」


 携帯を手にして谷口さんに見えるようにしてかざす。


「龍じゃねぇか。」


 会場周辺にいたカメラマンは避難したらしく、上方からの映像に切り替わっていたが、カメラのズーム機能は抜群らしい。


「兄貴、1時間後に爆発するらしいです。」


「はぁ?」


 谷口さんは食い入るように携帯画面を凝視する。


 兄貴は何故かジャケットを開いて腹の爆弾を露わにしたままだ。


 そして、兄貴の淡々としたスピーチはスピーカーを通して響き続けた。


『まず要求を言う。』


 俺も谷口さんも、身じろぎ一つせず画面越しに兄貴を見守る。


『要求は… 蔦山隆治の釈放。』



 兄貴は表情一つ変えず、もう一度繰り返した。


『蔦山を釈放しろ。』



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