ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 そんな正面入り口を尻目に素通りし、業者のトラックなどが出入りする裏口へ回る。


 警備員に代わって、現在見張りをしている警察官に手帳を見せると、いともあっさりパーク内に進入できた。


 日置が話をつけておいてくれたんだろう、あいつ、使える。


 パーク内の地図は完全に俺の脳内にインプットされている。


 オープンしたら一番に乃亜と行こうと、メチャクチャ楽しみにしてたんだ。


 ドリーム・エクスプレスの公式ホームページに数十回に渡ってアクセスし、施設概要や、アトラクション情報などを、隈なく閲覧し尽くした。


 兄貴がいる屋外ステージは、パーク内中央に位置するシンボルアトラクションの前にある。


 迷うことなく車を走らせ、数分後には目的地に到着、チワワくんの指示どおり、湖ギリギリにワゴン車を停車した。


 ステージにはただ一人、兄貴が胡坐をかいて座っている。


 まるで… 飲んだくれて道端に座り込んでしまった酔っ払いのようだ。


 俺は運転席と助手席の間から後部座席に移動し、湖とは反対の助手席側のスライドドアを開けた。


「兄貴、こっちだ!」


 俺が大声で叫ぶと、兄貴は軽やかにステージから降り、まるで疾風のようにこちらへ駆けて来る。


 兄貴よ、頼むからそのボディに、無駄な衝撃を与えないでくれ。


 俺の腕を掴んで引き、兄貴は俺を車から引き摺り降ろしながら、俺と入り違いに後部座席に乗り込んだ。


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