ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
けたたましいサイレン音を轟かせ、消防車2台がようやく到着。
中から消防士たちが雪崩のように次々と降り立ち、手際よく消火作業を開始する。
俺はただ呆然とその様子を眺めていた。
「有坂皆人」
背後から呼ばれ、振り向くとそこに、日置が立っていた。
日置の瞳の奥に哀切を見た俺は、たった今、ここで起きたことを嫌でも理解する。
「信じられない… 兄貴がこんな簡単に…」
ボソボソと呟き始めた俺の左肩を、日置の右手が思い切り突き飛ばした。
立っているのがやっとだった俺は、簡単に弾かれ、数歩後ずさる。
「あんた、本気でそんなこと思ってんの? あの二人が死ぬわけないじゃない!」
返す言葉が見つからず、ただ黙って日置を見詰めた。
「あんたは、あんたはどこまでバカなのよ! バカ! 間抜け! 役立たず! 死んじゃえ!」
日置が罵倒しながら、全力で俺の胸を何度も殴りつける。
それでも泣かない日置が、とても痛々しく思えた。