ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「皆人、龍を連れて来い。」
谷口さんは俺に、いとも簡単にそう言った。
兄貴は政府直属のエージェントだった。
公にはされていない国の裏組織、『CIA』のような機関に所属し、潜入捜査や、法では裁けないが政府が危険と判断した凶悪犯罪者の暗殺などを、迅速かつ確実にこなす凄腕スパイだった。
ついでに言うと、谷口さんも、表向きは俺と同じ組織犯罪対策課の刑事だが、現在もこの秘密組織の一員だ。
兄貴はそんな任務に嫌気がさして引退したんだ。
連絡が取れないように、携帯電話の番号も頻繁に変えているらしいし。
そう簡単に連れ戻せるはずがない。
だけども谷口さんは、今にも泣きそうな、悲痛な顔で俺に訴えるんだ。
「多恵がどうなってもいいのかよ!?」
「よくない。」
そう答えるしかなかったし。