ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「あら、なぁに? 事件?」


 好奇心でその瞳を少女のように爛々と輝かせ、オバサンは俺の次の言葉を待つ。


「いえ、そういうわけでは… 久野さんの前にお隣に住んでいた『蔦山明文』について、知っていることがあれば教えて頂きたいんですけど。」


「ああ、久野さんの前の前に住んでた人ね。」


 僅かだが、オバサンの顔が曇ったように見えた。


「ご存知ですか?」


 その顔はご存知ですよね!?


「ええ、よおく覚えているわ。男の子が一人いてね、隆治くんっていったかしら、とても可愛い子だったんだけど…」


 蔦山さんのことだ、『可愛かった幼少期』なんて、想像もつかないけど。


「ご主人が、飲んで帰っては、奥さんと子どもに暴力振るってたらしくてねぇ。

 奥さん、ある日突然、プイと出て行ってしまって… 息子さんが中学上がる前ぐらいだったかしら。

 可哀想に… 残された息子さんは、人が変わったみたいに大人しくなっちゃって。

 心を閉ざしてしまったのね。痛々しくて、見ているこっちが辛くなるほどだったわ。」


 オバサンは、遠い目をして回想に浸っている。


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