ロシアンルーレットⅡ【ｺﾐｶﾙｱｸｼｮﾝ】

「その当時露子は、どんな様子でした？」


「ああ、言い忘れてた、つゆこは住みついて一年ぐらいで、希世ちゃんを置いて自分だけ出て行ったのよ。本当にあの女、血も涙もない悪魔だわ。

　あんな可愛い娘さんを、親戚でもなんでもない男二人の家に、置き去りにして。」


「そうですね。」


　俺もそう思う。


　そして、露子には天罰がくだりました、でもこれは伏せておこう。


「その後、義理の兄妹二人で暮らしていたわ。隆治くん、本当に良く希世ちゃんの面倒を見ていてね。

　そのぉ…　希世ちゃん…　生まれつき脳に障害があったらしくてね。」


「知的障害ですか？」


「あ、ええ、そうなの。だから中学卒業してすぐ、近所の工場に就職したんだけど…　ほら、あそこに煙突見えるでしょ？　あそこで。」


　オバサンは東の方を指差した。


　確かに巨大な煙突がニョッキリと空を突き刺す様に飛び出しているが、煙は出ていない。


　このご時勢、環境問題とかにうるさいしね。


　何かを思い出したらしく、再びオバサンは気まずそうな顔をする。