ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】


 この辺りを管轄しているのは、出張所のような小さな警察署だった。


 広々とした一室に全ての課が詰め込まれているらしい事務所。


 その隅に、地味なパーテーションで仕切られた、応接用らしき区画があり、そこに通された。


 座り心地のあまりよろしくないソファーに、掛けて待つこと10分弱、痩せこけた髭面じいさんが、パーテーションを邪魔くさそうに退かしてこの区画に侵入し、向かいのソファーに、俺と対面するように腰掛けた。


「あんた、蔦山隆治について聞きたいって?」


 ドカリと腰を下ろすなり、開口一番、じいさんはそう言った。


 挨拶も何もなしかよ!? 忙しいのか? そうは見えないけれども!?


「そうです。父親を殺しかけたことがあるって聞いたもので。」


「ああ。」


 じいさんは、フッと意味深な笑みを漏らし、上着の内ポケットからタバコを取り出した。


 一本をくわえて火をつける。


「あいつ、高校生だったなぁ。自宅で親父を素手でボコボコにしやがって。

 尋常でない怒声や物音に、ただ事ではないってんで、近所の人から通報があってな、俺たちが駆け付けた頃にゃ、親父は死にかけてたわ。」


 苦笑しつつ、じいさんは紫煙を気持ちよさ気に吐き出した。


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