ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「やっかいな奴も、首突っ込んできてな。」


「誰ですか?」


「当時、ここの署長が汚職だなんだと騒がれて、辞任したばっかでなぁ、その空いたポストに警視庁が寄越したのが、有坂元警視総監だ。

 いけ好かねぇ野郎だった。そいつがなんでか、蔦山に目ぇ付けてな、個人的に接触してたみてぇだな。」


 クソ親父、こんなとこまで侵食していたとは… じいさんにちゃんと名乗らなくて良かったし。


 じいさんは、俺がその『いけ好かねぇ野郎』の実の息子だとはつゆ知らず、つらつらとクソ親父の悪口を続けた。


「希世の面倒も見てやるとかなんとか、美味そうな餌チラつかせて、言葉巧みに誘ってたらしいわ。

 余計なお世話だがよ、俺は隆治に断れって言ってやった。あいつぁ信用できねぇ、どうせ利用するだけ利用して、ポイだってな。

 一旦は断ったみてぇだけどな、結局、高校卒業してすぐ、あいつんとこ行ったんだろ。

 しょうもねぇ事に手ぇ貸して… あんのバカが。だから言わんこっちゃねぇ。」


 辛そうに顔を歪めるじいさんは、蔦山さんに手を差し伸べ切れなかったことを悔やんでいるように見えた。


 そして、中途半端に関わった自分を責めているようにも。


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