ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
じいさんから聞いた修道院に希世はいなかった。
二日前、蔦山隆治だと名乗る男が連れ出したらしい。
応対したシスターに向かって、ろくに確認もせずにと、怒り狂って罵声をあげる俺を、至って冷静な谷口さんが制し、修道院を後にした。
「どうせ謝礼だとか何とか言って、まとまった金を置いてったんだろ。このご時世だ、誰も責められねぇ。」
帰路を行く車の中、諦めたような谷口さんの呟きは、虚しく車中に漂い、それがその場の空気を淀ませ、なんだか息苦しかった。
不景気の波がこんなところにまで押し寄せているとは。
シスターは、希世が連れ出された翌日、もう一人、別の男が希世を訪ねて来たとも言っていた。
その男の特徴、40代前半、長身、短めの黒髪、漆黒の瞳、落ち着いた低い声、そして、映画俳優ばりの美形。
『色ボケシルバーマンだ。』
『窪田さんだ。』
男の特徴を聞いた瞬間、谷口さんと俺の脳裏に、ある一人の男が浮かんだ。
後で答え合わせをした結果、やっぱり、色ボケシルバーマンこと、捜査官Kに違いないということで、俺たちの意見は合致した。
希世を連れ去ったのは多分、東郷組の誰かだ。
露子に希世のことを吐かせたのだとしたら、全て辻褄が合う。