ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 もともと自宅には深夜に帰り寝るだけという生活を送っていた隆治だったが、露子と希世の同居によって、一層寄り付かなくなった。


 露子と希世にほとんど関わらずに過ごした隆治だったが、希世に障害があることに気づくのに、大した月日は要しなかった。


 14歳にしては、希世の言動は余りにも幼かった。






 何もしなくても汗ばむような蒸した空気は次第に澄んで、木の葉は暖色に染まり始め、肌寒くなった。


 隆治が珍しく夕方に帰宅すると、玄関先で、希世が露子に酷く叱られていた。


 露子の「お帰りなさい」という声掛けを無視して素通りし、すぐさま自分の部屋へと直行した。


 雨が窓を激しく打ちつける音を疎ましく思いながら、ベッドに身体を仰向けに落とす。


 先ほど目にした光景が、嫌でも脳裏に纏わり付いて離れない。


 希世は、泥だらけの子犬を、自分の服が汚れるのも構わず大事そうに胸に抱きかかえながら、露子の怒鳴り声に怯えて泣きじゃくっていた。


 突如、思い立ったように、隆治は家を飛び出した。


 傘は持ったが、差さずにひたすら走った。


 探していたそれを見つけると、ようやく足を止めて傘を差す。


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