ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 クローゼットから取り出した、自分の冬物のコートを手にした露子が、ビクリと身を震わせ、ゆっくりと振り返る。


「あら、おはよう…」


 怯えたように、隆治の顔色を伺うように、おどおどと挨拶を口にすると、露子はしていた作業を再開した。


 露子の足元には大きなボストンバッグ、その中へ、手にしたコートを手早く折り畳んで入れると、ファスナーを閉めた。


 ようやく脳が働き始め、隆治は状況を把握する。


 パンパンに膨らんだバッグを片手で持ち上げ、露子は隆治が立つ部屋の出入り口へと歩いて来た。


 行く手を阻むように、入り口を塞ぐように隆治が身をずらし、露子は隆治の目の前で立ち止まった。


「どいてよ。」


 露子は自分より背の高い隆治を、睨み付けるようにして見上げた。


「希世を連れて行け。」


 静かだが威圧的な物言いに、露子は一瞬怯むも、


「あんたの父親が、あの子を穢したんじゃない。責任取りなさいよ。」


 意を決したように言い返す。


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