ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 返す言葉もなく、隆治は視線を落とすが、それでも露子を通すまいと、その身体は出口を塞いだままだった。


 隆治の困惑した表情は、得体の知れない色気があり、露子の身体の深部がザワザワと騒ぐ。


「ねぇ… あんたなら、連れてってあげてもいいわよ。一緒に来ない?」


 艶やかに、吐息のように、露子は隆治に囁きかけた。


 不意をついた露子の誘いに、隆治は視線を上げて、目の前の露子を直視した。


 微かに驚きを滲ませるが、依然冷たい表情を崩さない隆治は、やはり露子の中の『女』を猛烈に惹きつけて止まない。


「あんた、あの町医者の奥さんに、小遣い貰ってんでしょ?」


 脅迫染みた口調で露子は言う。


「何が言いたい?」


 冷ややかに露子を見下ろしながら、全く動じることなく隆治は聞き返した。


 露子は右手で、そっと隆治の胸に触れ、上目遣いで隆治を見詰める。


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