ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 希世は振り解こうと全力で暴れ、それが叶わないとわかると、隆治の左手に噛み付いた。


 予想外の反撃を受け、思わず希世を手放してしまった。


 自由になった希世は再び走り出し、隆治はその後姿をただ棒立ちで眺めていた。


 隆治は自分の中の張っていた糸が、プツリと切れる音を聞いた気がした。


 もう、何もかもがどうでもいい。


 遠ざかる希世が、まるでテレビか何かで画面越しの映像を見ているような、非現実的なものに感じた。


「勝手にしろ。」


 伏せ目がちにため息をつき、隆治は小さく毒づいた。






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