ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
希世の妊娠に隆治が気付いたのは、その半年後のことだった。
制御しきれない怒りで半狂乱になって詰め寄る隆治に、明文は、
「イカレタ娘の使い道なんか、それぐらいしかねぇだろうがよ。」
と、平然と言い放った。
全身の血が、一気に頭に昇り、その後、思考が停止したように、隆治の脳内は真っ白になった。
気付くと、むせるようにして血を吐く明文の上にまたがり、頭だろうと、胴だろうと構わず、無我夢中で殴りつけていた。
近所の住人の通報により、警察官が駆け付けた頃には、既に明文は意識を失いぐったりと横たわっていた。
明文はすぐさま最寄りの総合病院に運ばれ、大事には至らなかったが、退院後は隆治から逃げるように姿を消す。
残された隆治が希世を近所の産婦人科へ連れて行き、『父親がわからない』という理由で、中絶手術を受けた。
赤ちゃんを産みたかったと泣きじゃくる希世に、セックスによって妊娠すること、そういった行為は愛し合う二人がするものだということなどを、希世が理解できるまで、隆治は根気よく言って聞かせた。