ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】


 だが中学を卒業して働き始めた希世は、再び妊娠する。


 父親は同じ職場の『しょうくん』だと、『しょうくん』が大好きなのだと希世は嬉しそうに隆治に語った。


 隆治は希世が『しょうくん』と呼ぶ男と、希世には内緒で接触する。


 喫茶店に呼び出された曽根崎省吾は隆治に、「すみませんでした」と申し訳なさそうに茶封筒を差し出した。


 予想はしていた。


 だがこうもあっさりと、当然のように金を渡す曽根崎に、隆治は激しい怒りを覚え、殺意すら抱く。


「他に女がいるのか?」


「いえ、そういうわけでは…」


「希世と… 付き合ってたんだろ?」


 せめて隆治のこの問いに、曽根崎が迷わず頷いてくれたなら、いくらか救われる、そんな縋るような隆治の願いは、呆気なく砕かれる。


 曽根崎は「え?」と驚いた顔をし、


「そんなの… わかるでしょ?」


 媚びるように苦笑して言った。


 やり切れない想いに、隆治の心は空っぽになった。


 人間とは、怒りや悲しみといったマイナス感情にも耐性がつくようだと隆治は思った。


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