ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「『しょうくん』は希世の赤ちゃんの父親にはなれないと言ってる。」
隆治がそう伝えると、希世は「そんなのウソだ」といつものように泣き出した。
そしてこんな時、決まっていつも希世の怒りの矛先は、隆治へと向かうのだ。
お兄ちゃんのバカ
お兄ちゃんなんか嫌い
お兄ちゃんなんか、お兄ちゃんなんか
希世と隆治の他に誰もいないリビングはガランとしていて、希世の隆治を激しく罵る声だけがこだまする。
泣きながら隆治の胸を、両手でがむしゃらに殴りつけて来る希世に、隆治は近寄ろうと一歩一歩踏みしめるように、ゆっくりと歩を進める。
希世は無意識に、近寄らせまいと後退る。
やがて希世は壁際まで追い詰められ、ようやく隆治の胸から顔へと視線を上げた。
隆治の今にも泣き出しそうな、酷く辛そうな顔を見た希世は、動きを止めて凍りついたように固まった。