ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 呆然と隆治を見詰める希世の華奢な首に、隆治はゆっくりと両手を持っていき、そして優しく包み込んだ。


 この真っ白で美しいものを、今、この手で壊してしまえば、楽になれるのだろうか。


 そんなことを考えながら、隆治が親指に少しだけ圧をかけると、希世は小さく呻き声を漏らし、苦しそうに目を細めた。


「あの女が犯した最大の罪は…


 お前を




 こんなにも美しく産んだことだ。」




 嗚咽交じりにそう言い、隆治はさらに手に力を込めた。


 そんな隆治に希世は、喉を締め付けられて思うように言葉を発することができないが、


「お兄… ちゃん… どこか… 痛いの?」


 途切れ途切れだが、なんとか声を絞り出した。


 その言葉によって隆治は我を取り戻し、希世の首から両手を離した。


 そして隆治は、希世の右手首をそっと握り、その掌を自分の左胸に当て、


「ここが痛い。」


 そう呟くと、隆治の左目から涙が一筋伝った。


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