ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
事が済んでも服を着ようとせず、全裸のまま布団にくるまり、多恵は壁を向いて横たわったまま、シクシク泣いている。
自分だけさっさと服を着終えた木戸は、そんな多恵の後姿を眺めて、思わずため息を漏らした。
そっと近寄って膝を落とし、両手を多恵を挟むようについて、木戸は多恵の顔を覗き込んだ。
「おい、もう泣くな。俺は… 良くなかったか?」
「わかってるくせに。聞かないで。」
木戸を見ず、声だけで反発して、多恵は布団に潜り込んでしまった。
「もう、谷口に会わせる顔がない。それに翔馬にも。」
木戸は布団を力ずくで捲ると、
「顔ならここに、ちゃんと付いてる。」
そう言って、多恵の顎を片手で掴み、自分の方へと向けた。
多恵は頑として視線は木戸へ寄越さない。
「俺を見ろ。」
木戸が穏やかな口調で言うので、多恵は恐る恐る木戸を見上げた。