ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「セックスは愛情確認だ。」


 今度は何を言い出すのかと、多恵は身構えた。


「俺たちは愛し合ってる訳じゃない。だから、これはセックスじゃない。」


 多恵の想像を遥かに超えた、常識から逸脱した木戸の思考に、言葉を失い、ただポカンと木戸を眺めた。


「それでも、家族のところへ戻ったお前が、旦那と上手くいかないって言うんなら、俺がお前と子どもの面倒を一生みてやる。

 心配しなくても、俺はすぐ死ぬ。たっぷり保険をかけときゃいい。」


「嘘つき。」


 もう木戸に対して、この言葉は口癖のようになってしまっていた。


「本気だ。」


 だが木戸は真顔で否定した。


 多恵の口癖に対しての初めての否定に、多恵は意表を突かれて目を見張る。


「冗談でこんな事言えるかよ。」


 そう言って木戸は照れくさそうに笑った。


「なんであんたが私の面倒を… 頭おかしいんじゃないの?」


「お前は、俺より長生きしそうだからな。先に逝かれるのは… しんどい。」


 そう言ってまた、木戸は困ったような苦笑を見せた。


「そんなの… 当たり前じゃない。」


 一回り以上も年下の自分に、何故木戸がこのような事を言うのか、多恵にわかるはずもなかった。






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