ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「多恵は、男を見る目があるんだよ。」


 不機嫌な顔のまま、谷口さんがボソリと付け加えた。


 もしかして、誉めてますか? 俺のこと…


「色ボケシルバーマンは『女はなんとかする』って俺に言ったんだ、谷口さんも聞いたろ? だから殺されたりしないって。」


 そうだ、俺たちが動かなくたって、色ボケシルバーマンは、多恵ちゃんを無事返してくれるさ。


 そして俺は谷口さんに、多恵ちゃんとのことを水に流して頂きます。


「俺は…」


 谷口さんが言葉を詰まらす。


 なんなんだ!? 何故谷口さんは、こんなにも深刻な顔をしているのだ!?


「『俺のとこに戻ってきたら』って言ったんだよ。」


 意味わかんねぇ、谷口さんは、不安とストレスで情緒不安定になっているのだろうか。


「そら、谷口さんとこに戻るでしょうよ。他にどこに戻るんだよ!? 俺んとこ来られても困るしね。乃亜ちゃん、ああ見えてとっても凶暴なんです。」


 俺がそう言うと、谷口さんは目を細め、ジットリとした視線を俺に寄越した。


 一体なんなんだよ。


 すぐに谷口さんは視線を前方へ戻し、仏頂面はそのままに、それ以上は何も言葉を発することなく運転を続けた。






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