ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 キングダブルサイズのベッドの向こうは前面ガラス張り、そこから見渡せる、星屑を散りばめたようなパノラマは、俺みたいなロマンスの欠片も持ち合わせていない野郎から見ても、かなり洒落ている。


 兄貴はベッドの向こう側へと回り込み、そのガラス越しに広がる夜景をバッグにして立った。


 我が兄ながら、実に絵になると思う、まるで映画のワンシーンを見ているようだったろうね、覆面さえなければ…


「物はどこだ?」


 男に銃の筒先を向け、全ての感情を捨て去った氷のような顔で、兄貴が低く問う。


「何のことだ」


 全裸の男はベッド上に横たわったまま、この期に及んで白を切る。


「蔦山が吐いたんだろ? 俺たちは見てのとおり、金に困っている。噂じゃ蔦山が隠しているソレ、末端10億を下らないらしいな。是非とも、俺たちに譲ってもらいたい」


「何寝ぼけた事言ってやがる! 死んだってお前らなんかに、くれてやるかっ」


「人助けだと思ったらどうだ? 死ぬ前に少しでも善いことして、あの世で罪が軽くなるなら安いもんだろ?」


「吐いたところで、お前に殺られるんだろ?」


 男は兄貴の表情を伺い見るようにして、おずおずと尋ねた。


「吐けば、俺は撃たない。今ここで俺に殺られるか、後で吐いたことがバレて組織に消されるか、どちらでも好きな方をお前が選べ」


 男は低く唸り、しばし思考を巡らす。


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