ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 額に脂汗が滲んで、汚い裸体と醜く歪んだ顔が、俺の目を容赦なく攻撃する。


 見苦しいな、この見苦しさ、半端ねぇ破壊力だ。


 ようやく男が観念したように口を開いた。


「か… 金なら… そ… そこの金庫に…」


 男が少しだけ身を起こし、自分の爪先方向へと左手で指差しながら言う。


 なんて往生際の悪い… 俺たちに僅かばかりの金掴ませて、ヤクを諦めさせようってか!? 


 男が指す方に兄貴が視線をやると、男はすかさず右手を枕下へと滑り込ませた。


 兄貴め、こんなベタな手口に引っ掛かりやがって。


「俺たちは『とっても』困ってんだ、そんなはした金ごときじゃ、何の役にも立たねぇよ」


 呟くように言い、銃の筒先で男の左方から顎をクイとすくうように持ち上げ、男の怯えた視線を尻目に覆いかぶさるように上体を倒して、枕の下からトカレフを抜き出した。


 兄貴はこちらに視線を戻すと、フッと笑みをもらす。


 クソ兄貴、わかっててやってんのか、ふざけんな。


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