ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 以前にもこのような報酬はあった、が、どうも信用できないと、男は疑り深く視線を上下させ、女の全身を舐めるように観察する。


 女はしばし待ったが、どうにも煮え切らない男の反応に痺れを切らし、


「やるの? やらないの? こっちも忙しいんだ、はっきりしな」


 苛立たしげに捲くし立てる。


「胡散臭ぇ」


 女の剣幕に、男の猜疑心は益々増長する。


「ああそう、じゃ、ご褒美は無しってことね。次の客にあんたたちの分までたっぷりサービスしてやるよ」


 吐き捨てるように言うと、女は踵を返す。


 と同時に男の背後から、別の男の声だけがこちらに届く。


「おい、親父からメールだ。害虫駆除完了、物も無事取り戻したとさ。あの女、始末すっか?」


 それを耳にした男は、反射的に、既に背を向けている女の腕を掴んで引き止めた。


「待てよ」


 言うと、女はゆっくりと振り返り、満足気に妖艶な笑みを浮かべた。


 が途端、男を押しのけるようにして女は我先にと上がり込み、


「寝室はこっちかしら」


 などと言いながらも、古い板張りの廊下を軋ませながら、足早に奥へと進む。


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