ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 下半身にも不自然な膨らみがあり、それは女の身体に在るはずのないモノだ。


 瞬間、女が目を見開き鋭い眼光で男を射抜いた。


 その顔は先ほどまでの妖艶さは微塵も残っておらず、今現在は見紛いようが無い、間違いなく『男』の顔であった。


「そこを刺激すんじゃねぇ、感じるだろうが」


 不適に微笑み、男に組み敷かれた娼婦に扮した男――


 蔦山は男を嘲るように言った。


 そしてすぐさま足の付け根からダガーナイフを抜き取ると、腹筋だけで上体を素早く起こし、男の首筋目掛けて横から切りつける。


 が、咄嗟に男は身を引いてそれをかわし、さらに後じさりながら上着の内ポケットから銃を抜いた。


 蔦山はすかさず身体を左方向へ向けるように倒し、左肘と左膝で身体を支え、男の銃を払おうと右足で弧を切る。


 が、タイトなスカートに太腿辺りを拘束されており、思うように足が上がらず、その蹴りは、男が銃を持つ腕をヒョイと軽く上げるだけで、難なくかわされてしまった。


 男の銃口が真っ直ぐに蔦山に向けられた瞬間、蔦山は凍てついたように動きを止め、そしてチッと舌を鳴らして苦笑した。


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