ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
と、男の左肩からヌッと細長い腕が伸び出て、その先端の手の平は、ヒラリと男の額に触れるや否や、クイと男の顔をやや上方に傾け固定する。
間髪を入れず男の喉元を、何かが一瞬にして水平に行き来し、たちまちそこから血しぶきが激しく舞った。
ゆっくりと男の身体が崩れ落ちるとそこに、黒いタイトな衣服を身に纏った細身の女が片膝を付いてしゃがんでいるのが、ようやく蔦山の視界に映った。
「だから『私がやる』って言ったじゃない」
女――理沙は冷ややかに言った。
「ダメだな、お前じゃ色気が足りねぇ」
蔦山がすかさず言い返すと、理沙はスッと立ち上がりながら
「付いてるよりマシよ」
と吐き捨て踵を返す。
蔦山もすぐさま立ち上がり、ウィッグをもどかし気に左手で剥ぎ取り、叩きつけるようにして放った。
理沙を追い越して廊下を奥へと移動しながら、付け睫毛も同じく荒々しく外して投げ捨て、口紅を手の甲で乱暴にこすって落とす。
奥の寝室の扉を勢い良く開け放てば、蔦山が想像していたとおりの光景が視界に飛び込んで来た。
が、やはり蔦山は正気を失いかける。
間髪を入れず男の喉元を、何かが一瞬にして水平に行き来し、たちまちそこから血しぶきが激しく舞った。
ゆっくりと男の身体が崩れ落ちるとそこに、黒いタイトな衣服を身に纏った細身の女が片膝を付いてしゃがんでいるのが、ようやく蔦山の視界に映った。
「だから『私がやる』って言ったじゃない」
女――理沙は冷ややかに言った。
「ダメだな、お前じゃ色気が足りねぇ」
蔦山がすかさず言い返すと、理沙はスッと立ち上がりながら
「付いてるよりマシよ」
と吐き捨て踵を返す。
蔦山もすぐさま立ち上がり、ウィッグをもどかし気に左手で剥ぎ取り、叩きつけるようにして放った。
理沙を追い越して廊下を奥へと移動しながら、付け睫毛も同じく荒々しく外して投げ捨て、口紅を手の甲で乱暴にこすって落とす。
奥の寝室の扉を勢い良く開け放てば、蔦山が想像していたとおりの光景が視界に飛び込んで来た。
が、やはり蔦山は正気を失いかける。