ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「いつまでそうしてる気? 蔦山隆治」
そう言って、今しがた男が脱いだばかりの衣服を、蔦山に向かって投げ付けた。
「さっさとそれに着替えて」
蔦山はその視線を、チラリと理沙に一瞬だけ寄越したが、すぐにまた希世へと戻し、はだけた胸を隠すように、希世のブラウスの前身ごろをしっかり重ね、その上から、自分が着ていたブルゾンを素早く脱ぐと着せてやった。
そうしてようやく立ち上がると、理沙のことなどお構いなしに、アッと言う間に娼婦の衣装を全て脱ぎ去り下着一枚の姿になる。
理沙は思わず頬を赤らめ、視線を逸らした。
そんな理沙を尻目にフッと笑みを漏らし、男が屍になる前に脱いだ服を手に取った。
着終わると、ようやく本来の姿となった蔦山は、改めて理沙と向かい合うように立ち、深刻な面持ちで口を開いた。
「お前……こんなことして、後悔しねぇか?」
その気遣うような口調から、蔦山の言う『こんなこと』が何を指しているのかを察していながら、理沙はあえて聞き返す。
「あんたを助けたことを言ってるの?」
蔦山は頷く代わりに目を一度伏せて、理沙の問いに答えた。