ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「龍一くん、移動時は、まず行き先を同乗者に伝えるべきではないかな?」
相も変わらず、行き先も告げず仏頂面でハンドルを握る運転席の兄貴に、優しく教えてやった。
兄貴は、チラと冷ややかな視線を俺に寄越し、すぐに正面を向き直ると、
「自家用船舶専用、係留所。簡単に言うと港」
「へぇ……で?」
俺が言う『行き先』には『目的』も含まれてんだよ、おバカさんめ。
「そこに、蔦山所有のクルーザーがある」
「そん中に、ヤクが隠してあるって訳か。てかさ、受刑者って船所有できんの?」
「お前はバカか? 本名で所有してる訳ないだろうが」
兄貴がため息交じりに言う。
はい、俺は『バカ』です、皆様俺のことを、揃ってそうお呼びになります。
俺がふて腐れて無言になると、兄貴のジャケットのサイドポケットから、携帯のバイブ音が聞こえた。