ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「兄貴はどうした?」


 俺の身体の死角に入っているのか、男は少し首を傾げ、覗き込むようして俺の背後に停まっている兄貴のプジョーに視線をやった。


「人質が先だ。」


 俺が平静を装って、表情を殺して請求すると、男は背後を振り返り、銃を構えたチンピラの方に顎で合図した。


 外車のトランクから、まるで物のように乱暴に放り出されたのは、DVDの映像で見た、尺取り少年に間違いなかった。


 もう今はハムのようなロープぐるぐる巻きではなく、口にガムテープと、後ろ手に両手を拘束されているのみだった。


 男に首根っこを掴まれた少年は、怯えきった目をして、その小さな身体をガタガタと小刻みに震わせている。


「女は?」


 予想通りだったが、敢えて納得いかない素振りを醸し出し、男に尋ねた。


「悪ぃんだけどな、 お前の兄貴にさぁ、引き受けてもらいてぇ簡単な仕事があってなぁ。ヤツがそれを滞りなく迅速に終えたらその時は、女を返してやる。」


 男はクソムカつく薄ら笑いを浮かべてそう言った。

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