ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「そっちもだ。」


 男は目を伏せ、兄貴の足元を見詰めて、再び低く呟いた。


 男の表情が悲しげに見えるのは、気のせいか?


 兄貴は驚いたように目を見開き、何か物言いたげに男を見詰める。


 それでも男は何も言わなかった。


 ただ、兄貴を見詰め返すだけ…


 やっぱり男の顔は悲しげだ、まるで泣いているように見える。


 至って無表情なのに何故なんだ? 哀愁を帯びた40男の渋味がそう感じさせるんだろうか。


 兄貴は諦めたように小さく息を吐くと、その場に屈んで、パンツの裾を両手で勢い良く引き上げると、そこに装着していた小型の銃を、先程同様、ホルスターごと取り外した。


 そんなところにまで… いや、関心している場合じゃねぇな、兄貴はこれで完全に丸腰だ。


 兄貴は再び立ち上がると、外したそれを、すでに男に渡った銃の上に重ねるようにして乗せた。


「連れて行け。」


 男は2丁めの銃を受け取るなり身を翻し、誰に対してでもなくそう指示すると、車へ向かって歩き出した。

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