ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 多恵の方をゆっくり振り返った木戸の顔は、先程までの無表情とは違い、薄っすらだが悲しみを浮かべているように見えた。


 多恵を哀れむような同情の眼差し。


『この男は助けてくれない。』


 多恵は絶望の淵に突き落とされた。






「きゃぁぁぁぁ! やめてぇ! 触らないでぇ!」


 鼓膜が破れるほどの爆音量の悲鳴が小さな建物内に響き渡った。


 隣室の事務所でソファーに腰掛け、タバコをくわえたところだった木戸は、おもむろに顔を顰め、手にしたライターを灰皿の置かれたテーブルに投げ付けるようにして手放し、立ち上がった。


 すぐさま、その声の発生元である部屋へ向かう。


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