ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 木戸はゆっくり歩み寄り、


「聞こえなかったか? 富樫、そこをどけ。」


 富樫はしぶしぶ、その身体を持ち上げ、名残惜しそうに多恵から離れた。


 結局、犯される相手が変わっただけかと、多恵は涙が溢れそうになる。


「けど木戸さん、このアマ、ムチャクチャ暴れますよ。わざわざこんなめんどくさい女やらなくても木戸さんなら…」


 不意に木戸が鋭い視線で富樫を射抜き、富樫は途中で言葉を呑み込む。


 富樫の背筋を、冷たいものが伝った。


 木戸は再び多恵の前に片膝を付き、俯く多恵の顔を覗き込んだ。


 漆黒の瞳に多恵だけが映った。


「こういうことはなぁ、富樫。両者同意のもとでやるべきだ。それが男の美学じゃねぇか!?」


 木戸が多恵を凝視したまま、静かに諭すように言う。


「はぁ。」


 富樫はそう返事をするも、木戸が自分に背を向けているのを良いことに、その顔は不貞腐れて歪んでいた。


 が、木戸の言葉に逆らう訳にもいかず、小さく舌打ちすると、しぶしぶ部屋の出口へと向かった。


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