ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
『可愛い子、いた?』


 まだそれですか?


「いた。」


 ちょっと意地悪で言ってみると、乃亜の顔が面白いくらいにブゥと膨れた。


「でも…


 乃亜より可愛い子はいなかった。」


 乃亜の顔が、今度は面白いくらいに、赤くなる。


 乃亜はしゃべらない分、表情が豊かで、その辺のうるさい女より、よっぽど判りやすい。


 乃亜を巻き込むようにして、換気扇横の壁に両腕を突き立てた。


 壁に背中を預けた乃亜の、俺に向けられる愛しげな眼差しに、クラクラする。


 乃亜の顔の両サイドに突き立てている腕の肘を折り、身を屈め、そっと顔を近づけた。


 それから、唇と唇が微かに触れた途端、すぐに離してやった。


 ニッと一瞬だけ口角を上げて微笑んでみる。


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