ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
「ああ、思い出した。この前あいつと行ったキャバクラの名前がどうしても思い出せなくてな、それを聞きに…」


 俺はくだらない嘘を最後まで聞くのも億劫で、足元に転がっているアイスピックを拾い上げた。


 杉下は目を見開き、ホモマッチョ早乙女は反撃に出ようと立ち上がる。


 素早くアイスピックの先っぽで自分の左掌を勢い良くこすって、俺の不可解な行動に呆気にとられている杉下の右手にそれを握らせた。


 俺の左掌に一本の赤い筋ができ、次第にその線は太くなって滲んだ。


「公務執行妨害と傷害の現行犯で逮捕しよっかな?」


 そう言って、自分の左手を杉下にかざし、エヘっと可愛くエンジェルスマイル。


 杉下の顔が『可愛くねぇ』と言っているが、気にしないことにする。


「てめぇ、汚いねぇぞ! そんなもん目撃者の証言で無効にしてやらぁ。ふざけんな、このエセポリ公!」


 ホモマッチョ早乙女のくせに、まともな事言いやがる。


「目撃者ってどこにいるの?」


 再びエンジェルスマイル。


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