ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 木戸が、多恵は自分のものだ、手を出すなと宣言し、二人はそれに従う意思を見せはしたが、ほとんど木戸が不在という状況で、それが守られ続ける保証はないのだ。


 あのような下品で、乱暴な獣のような男たちにこの身を汚されるぐらいなら、命を掛けてでも行動を起こさなければ。


 警察官の妻、そして一児の母としてのプライドが許さない。






 その日の夜遅くに、チャンスは不意に訪れた。


「おい、アツシ、タバコ切れたわ、お前買って来い。」


 ドア越しに富樫の声が聞こえた。


「俺の吸っていいっすよ。」


 アツシと呼ばれた男は面倒くさいのだろう、猫なで声でそう言った。


「メンソなんか吸えるか! てめぇ、めんどうなだけだろーが! ウダウダ言ってねーでとっとと行け!」


「はい、はい、わかりましたよ。」


 アツシの不満気な返事が聞こえ、程なくしてドアが開閉する音が響いた。


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