ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
 多恵はすかさず行動に出た。


 体操座りの格好のまま足を使って尻を滑らすようにドアの元へと移動し、仰向けに転がると、拘束された両足を振り上げて、その踵を思い切りドアに繰り返し打ち付けた。


「なんなんだよ、クソアマ。」


 けたたましいノック音に、富樫が腹立たしげに怒鳴る。


「トイレよ、トイレ!」


「てめ、さっき行ったばっかだろーが。」


「おっきい方なの、もう漏れそう! 早くして!」


 ここで引き下がる訳にはいかない、多恵は恥も外聞も捨て去り、切迫している風を装って、大声を張り上げた。


 やがて、開錠する音がし、ドア口に仰向けに転がっていた多恵の下半身が、開けられたドアに押しやられて小さく弧を描いた。


 何が引っ掛かっているのかと、出来た隙間から中を覗き込むようにして、富樫が顔だけを突き出した。


「お前何やってんの?」


 富樫が冷ややかに、横たわったままの多恵を見下ろした。




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