ロシアンルーレットⅡ【コミカルアクション】
多恵の腕を鈍い振動が伝い、と同時に、富樫の体はその場に崩れるようにして冷たい床に叩きつけられた。
こうも簡単に人は意識を失うのかと、一瞬呆気にとられた多恵だったが、灰皿を手放すとそれはゴトリと大きな音を立て、それによってすぐに現状を思い出す。
慌てて事務所を出ようとしたが、横たわる富樫のジャケットの裾がめくれ上がっており、ウエスト部に差し込まれた黒い物が多恵の目に留まった。
咄嗟にしゃがんでそれを抜き取ると、ようやく多恵は事務所を飛び出した。
廊下に出て左右を見渡し、左方に出口を見付けて、そちらに向かって走り出す。
翔馬と引き換えに囚われた人物がいるであろう部屋の前を走り抜けようとした時、扉の上部にはめ込まれた四角いガラスから中を覗き見た多恵は、思わず足を止める。
部屋の中央に一本、天井と床を繋ぐ円柱状の柱があり、それを背中に抱えるようにして両手をロープで拘束され、足を投げ出して床に腰を付いている男に、多恵は見覚えがあった。
こうも簡単に人は意識を失うのかと、一瞬呆気にとられた多恵だったが、灰皿を手放すとそれはゴトリと大きな音を立て、それによってすぐに現状を思い出す。
慌てて事務所を出ようとしたが、横たわる富樫のジャケットの裾がめくれ上がっており、ウエスト部に差し込まれた黒い物が多恵の目に留まった。
咄嗟にしゃがんでそれを抜き取ると、ようやく多恵は事務所を飛び出した。
廊下に出て左右を見渡し、左方に出口を見付けて、そちらに向かって走り出す。
翔馬と引き換えに囚われた人物がいるであろう部屋の前を走り抜けようとした時、扉の上部にはめ込まれた四角いガラスから中を覗き見た多恵は、思わず足を止める。
部屋の中央に一本、天井と床を繋ぐ円柱状の柱があり、それを背中に抱えるようにして両手をロープで拘束され、足を投げ出して床に腰を付いている男に、多恵は見覚えがあった。